福井県の西部、嶺南エリアにある小浜(おばま)市をご存知でしょうか。かつてアメリカ大統領だったバラク・オバマ氏の名前と同じことから「勝手に応援する会」が話題になりましたが、小浜の魅力はそれだけではありません。歴史ある町並みと、豊かな海の幸。訪れてみると「なんだかいいことがありそう」と思わせてくれる、懐かしさと贅沢さに包まれた町でした。
歴史を刻む町並みと鯖街道
小浜は「鯖街道の起点」として栄えた港町。京の都まで魚や物資を届け、朝廷の食文化を支えてきました。その歴史が評価され、2015年に「御食国若狭と鯖街道」として日本遺産に認定されています。
町を歩けば、寺社仏閣の多さに驚かされます。小浜が大陸からの玄関口だった歴史を物語る光景です。明治時代の芝居小屋「旭座」や、かつての茶屋町・三丁町も健在。ベンガラ格子が連なる町並みは京都や金沢に似つつも、人が少なく落ち着いていて、静かに歴史の息吹を感じられます。
また、町の至るところに「化粧地蔵」と呼ばれるカラフルなお地蔵さまが点在。歩くだけで心がほっと和む、不思議な魅力が漂っていました。
宿で味わう若狭ふぐの贅沢尽くし
今回宿泊したのは小浜市の中心にある老舗旅館「せくみ屋」。夕食では「若狭ふぐ」づくしのコースが待っていました。
薄切りで弾力ある「てっさ」、旨味が凝縮した「ふぐの唐揚げ」、上品な出汁が沁みる「ふぐちり鍋」、そして極めつけはふぐの旨味が染み渡る「雑炊」。どの料理もふぐの新しい表情を引き出し、最後まで飽きさせません。
さらに、この夜は三丁町から芸妓さんが訪れ、唄と舞を披露。旅情あふれる時間に、心もお腹も満たされました。
若狭佳日で迎える「佳き日」の朝
翌朝は阿納(あの)地区に2023年オープンした「若狭佳日」へ。エメラルドグリーンの海を望む和風建築の宿で、朝から豪華な食事が並びました。
若狭かれいの一汐や鯖の醤油干し、地元の惣菜、汲み上げ豆腐、濃厚なヨーグルト。いずれも素材の持ち味を活かした上品な味わいで、土鍋炊きのコシヒカリとともに箸が止まりません。「若狭の一汐」と呼ばれる絶妙な塩加減の加工技術は、京へ魚を届ける歴史の中で育まれた知恵そのものでした。
特筆すべきは大浴場「湯処 内外海(うちとみ)」。まるで美術館の窓越しに海景を眺めるように湯に浸かり、心身ともにリセットされる贅沢な体験です。
小浜の魅力、そして未来へ
小浜は「御食国」として都の食文化を支えた歴史を持ち、今も豊かな海と人々の営みが息づいています。京都からも近く、町歩きや美食、温泉をのんびり楽しめる穴場の旅先。
「青々吉日(あおあおきちじつ)」――いつ訪れても佳き日になる、そんな言葉がぴったりの小浜。福井を旅するなら、ぜひ立ち寄ってみてください。