東京都心から電車で約1時間。
「西多摩・秋川」という名前を聞いて、多くの人が思い浮かべるのは夏のバーベキューやキャンプの舞台「秋川渓谷」ではないでしょうか。ところが実際に足を運んでみると、その印象は大きく覆されます。豊かな自然、歴史ある文化財、心和む温泉や絶品グルメ…。まさに「東京にこんな場所があったなんて!」と驚かされる体験が待っています。
迫力満点!秘境で出会う観光スポット
まず訪れたいのが檜原村にある小林家住宅。標高750メートルの山中に残る茅葺きの古民家へは、なんと傾斜45度のモノレールでアクセス。周囲に広がる山並みはまるで日本昔ばなしの世界そのもの。囲炉裏に火を入れると、時がゆったり流れる感覚に包まれます。
もう一つの必見は東京で唯一「日本の滝百選」に選ばれた払沢(ほっさわ)の滝。高さ約60mから流れ落ちる水の迫力に加え、マイナスイオンを全身で浴びられる癒しスポットです。
サイクリングで自然と町を満喫
秋川の楽しみ方としておすすめなのが、JR武蔵五日市駅前「裏山ベース」でレンタサイクルを借りての散策。電動アシスト付き自転車なら坂道もラクラク。川のせせらぎや鳥の声を聞きながら走れば、日常の疲れも吹き飛びます。
途中で出会えるのは、秋川牛を使ったメンチカツや地元野菜の煮物料理など、素朴ながら心に残る味わい。サイクリングと食の組み合わせは、この町ならではの贅沢な体験です。
歴史と花に彩られる寺社めぐり
秋川には京都や鎌倉を思わせる風情ある寺社も点在します。
「花のお寺」と呼ばれる龍珠院は、桜や紅葉に彩られる境内が見事。
また、広徳寺は大きな銀杏の木に囲まれた山門が圧巻で、秋には黄金色に染まる景色が広がります。
さらに、禅寺の玉傳寺では抹茶と手作り菓子を味わえる「寺カフェ 岫雲」が人気。縁側に座って山里の景色を眺めながら一服すれば、都会では得られない静けさと癒しを感じられます。
グルメは秋川牛から老舗料理屋まで
秋川の食の魅力は多彩です。
黒茶屋では、築250年の庄屋屋敷でいただく懐石料理が絶品。名物の「勾玉豆腐」はまるでクリームチーズのようななめらかさで感動必至。
さらに姉妹店燈々庵では、蔵を改装した上質空間で懐石を堪能できます。
地元精肉店の秋川牛メンチは、ブランド牛の甘みが凝縮された隠れた名品。
グルメ目当てに秋川を訪れる人が多いのも納得です。
歴史ある宿と癒しの温泉
秋川の旅で一度は泊まりたいのが、築200年超の古民家を改装した兜家旅館。囲炉裏を囲み、山菜や川魚を炭火焼きで味わう時間は格別です。鳥の声と渓流の音に包まれる朝は、まさに非日常。
日帰りで楽しむなら、人気温泉施設瀬音の湯へ。足湯に浸かりながら清流を眺めれば、心も体もほぐれていきます。
おみやげは地酒と醤油、こんにゃく!
旅の最後は地元の名産品をおみやげに。
石川酒造の日本酒「多満自慢」や地ビール「多摩の恵」。
近藤醸造の伝統的な丸大豆しょう油。
檜原村の井上食品の手作りこんにゃく。
どれも大量生産では味わえない“本物の味”が楽しめます。
編集後記:秋川が教えてくれたこと
秋川の魅力は「派手な観光名所があるわけではない」のに、ひとつひとつが心に残る“本物”だということ。便利さや効率だけを追い求める現代において、ここでは自然と人が共に生きる姿勢が今も息づいています。
東京からすぐ行けるのに、まるで遠くの山里を旅したような充実感。桜、新緑、紅葉、そして雪景色。訪れる季節ごとに違う顔を見せる秋川は、これからますます注目されるスポットです。
次の週末、都会の喧騒を離れて「西多摩・秋川」に出かけてみませんか?