「今年こそ、サッと良い写真が撮れるコンデジが欲しい」と思っていたところに、リコーから発表されたのが「GR III」の40mm版、GR IIIxのメタリックグレー限定モデル。発売を知って即予約したのは、正直こういった限定仕様に弱いからでもあるが、それ以上に「究極のスナップシューター」というGRの評判に惹かれたのも事実。使い始めて数カ月、いまや街歩きの相棒として欠かせない一台となっている。
起動0.8秒。撮りたい瞬間を逃さない速写性
GR IIIの魅力は、何と言ってもその起動の速さ。レンズキャップ不要、ボタン一つで0.8秒という高速起動により、「今だ」と思った瞬間を逃さずに撮影できる。これはスナップ写真において致命的な遅延を回避する大きなポイントだ。
また、ポケットに入るほどのサイズ感と重量で、常に持ち歩いても全く負担にならない。コンパクトさと俊敏さのバランスが非常に高く、街中での撮影が気軽に、そして自然にできるようになる。
描写力と色味で「撮って出し」が成立する
このカメラが素晴らしいのは、そのJPEG画質の美しさ。独自の「イメージコントロール」機能により、彩度やコントラスト、シャープネス、粒状感などを細かく調整できる。特に筆者が愛用しているのが「ポジフィルム調」や「ハイコントラスト白黒」などのプリセットだ。これらをベースに自分好みに微調整することで、まるでフィルムカメラのような質感ある一枚が“撮って出し”で完成する。
わざわざRAW現像する必要がない、というのは非常に大きい。写真を撮る→すぐにSNSにアップ、というスナップシューターらしいフローが自然と成立する。
多彩な表現を支える機能群
GR IIIはただのコンパクトカメラではない。たとえば「マクロモード」では被写体に6cmまで寄ることができ、背景の美しいボケを活かした印象的な写真が撮れる。また、「多重露出モード」を使えば、複数の写真を重ねて幻想的な一枚を作ることも可能。合成方法も3種類から選べ、撮影の幅を大きく広げてくれる。
これらの機能はすべて直感的な操作で行えるため、設定に時間を取られることもなく、撮影に集中できるのも嬉しい。
28mmと40mm、どっちを選ぶ?
GR III(28mm相当)とGR IIIx(40mm相当)の違いは画角にある。より広い風景を切り取りたいならGR IIIがおすすめだ。一方で、GR IIIにもクロップモードがあり、35mmや50mm相当の画角に切り替えることができるため、多少の柔軟性も備えている。
筆者は40mm版を選んだが、これは日常のスナップやちょっとしたポートレートに使いやすい画角だったから。用途に応じて選ぶのがよいだろう。
注意点:バッテリーと操作性
欠点があるとすれば、バッテリーの持ちがあまり良くない点。テスト撮影で3時間程度使うとバッテリー残量はかなり心許なくなっていた。1日中撮影する予定があるなら、予備バッテリーは必須だろう。
また、GR IIIにはオートモードが搭載されていないため、露出の基本操作にある程度慣れている必要がある。とはいえ、カメラ初心者であってもマニュアル操作を覚えるには良いきっかけになるはずだ。
写真を“日常”にするカメラ
GR IIIは、写真を「イベント」ではなく「日常」に引き寄せてくれるカメラだ。スマホよりも写真にこだわりたいけれど、一眼レフは大きすぎる。そんな人にとって、これほどピッタリな選択肢はなかなかない。
街を歩いていてふとシャッターを切りたくなる。そんな気持ちを引き出してくれる、GR IIIはまさに“持ち歩く理由になるカメラ”だ。