懐かしさと最先端が共存するハンドヘルド機

情報があふれる現代のゲームに疲れてしまった人へ。もっとシンプルに、もっと没入できる“あの頃のゲーム”をもう一度楽しみたくなったら、Analogue Pocketという選択肢をぜひ検討してみてほしい。レトロゲーム機の名作を現代の技術で忠実に再現した、まさに“至高のゲームボーイ”だ。

FPGA技術による完全ハード再現

Analogue Pocketは、米・Analogue社が開発したハンドヘルド型ゲーム機。見た目はゲームボーイを彷彿とさせるが、中身はまったくの別物だ。特徴的なのは、エミュレーターではなく「FPGA(Field Programmable Gate Array)」という特殊な集積回路を使い、ゲームボーイやゲームボーイアドバンスなどをハードウェアレベルで再現している点。これにより、かつてのゲーム機そのままの挙動や操作感を忠実に再現することができる。

多彩な対応機種とプレイスタイル

ゲームボーイ、カラー、アドバンスのカートリッジを直接挿して遊べるほか、別売のアダプターを使えばゲームギア、ネオジオポケット、Atari Lynxなどにも対応。FPGAにより遅延もほぼなく、見た目や音、プレイフィールまで含めて極めて高い再現性を誇る。

驚異のディスプレイ性能で美しく蘇る名作たち

ディスプレイには、3.5インチ・1600×1440ピクセルの超高精細LCDを搭載。これはオリジナルのゲームボーイの10倍の解像度にあたり、画面サイズを超えた美しさでゲームを楽しめる。FHDを超えるこの密度は、レトロゲームを“懐かしい”ではなく“美しい”と感じさせてくれる。

モダンな仕様と豊富な機能

加えて、USB-Cによる充電、ステレオスピーカー、マイクロSDカードスロット搭載、ドック接続によるテレビ出力にも対応。さらにボタンマッピングやリンクケーブルによる通信対戦まで可能と、レトロゲームの枠を超えた現代機としての完成度も申し分ない。

実際に遊んでみたら…“ゲームボーイ漬け”の日々

筆者もずっと気になっていたが、販売されるたびに即完売する状況が続いており、正規ルートで入手するのは至難の業。今回は運良くメルカリで限定色のスケルトンモデルを新古品で入手できた。届いたその日に『ポケットモンスタールビー』を起動し、気づけば3日でクリア。その後も『コロコロカービィ』など懐かしのタイトルを次々とプレイし、見事に“ゲームボーイ漬け”の日々が再来した。

ファームウェアで広がる互換性

また、発売後のファームウェアアップデートにより、「OpenFPGA」対応となったことで、その汎用性はさらに広がっている。microSDにCORE情報を入れることで、ファミコンやスーパーファミコン、メガドライブ、PCエンジンといった他のレトロゲーム機の再現も可能に。従来の“GBA互換機”という枠に収まらない万能マシンへと進化を遂げているのだ。

高価格でも価値ある“ロマンの塊”

難点は価格。筆者が入手した限定モデルは約9万円、通常モデルも6〜7万円と、いわゆるレトロゲーム機としてはかなり高価だ。しかし、硬質な質感と極めて完成度の高いハードウェアを手にすると、これが“ロマンへの投資”だったことにすぐ気づく。ゲームは娯楽でありながら、思い出であり、カルチャーであり、アートでもある──そんなレトロゲームの魅力を、最大限に引き出すプロダクトがここにある。

今後の展開にも期待

現状ではまだ敷居の高い存在だが、もし今後「Analogue Pocket 2」や「Pocket Mini」といった廉価モデルが登場すれば、日本でも一気にブームが巻き起こる可能性は高い。レトロゲームに少しでも愛着のある人には、強くおすすめしたい逸品だ。