福島県南会津郡下郷町にある大内宿(おおうちじゅく)は、江戸時代の宿場町の面影を今に伝える貴重な観光スポットです。かつて会津若松と日光今市を結ぶ下野街道の宿場町として栄え、現在も約500メートルにわたって茅葺き屋根の民家が立ち並ぶ独特の街並みが保存されています。1981年には国の重要伝統的建造物群保存地区に指定され、日本の原風景を感じられる場所として、国内外から多くの観光客が訪れています。

四季折々の自然美と歴史が織りなす街並み

大内宿の街並みは、春の桜、新緑の夏、紅葉の秋、雪化粧の冬と四季を通じて美しい景観を見せてくれます。中でも冬は雪灯籠やかまくらが街道を彩る「大内宿冬祭り」が開催され、幻想的な雰囲気を楽しめるのが魅力です。街道の突き当たりにある見晴らし台からは、茅葺き屋根の集落と雄大な山々の絶景が広がり、写真映えするスポットとしても人気があります。

江戸の暮らしを感じる「大内宿町並み展示館」と絵付け体験

大内宿の中心にある「大内宿町並み展示館」は、かつての会津藩主の休憩所「本陣」を復元した建物で、江戸時代の生活道具や茅葺屋根の構造を学べる場所です。館内の大きな囲炉裏の煙で屋根を燻す伝統的な方法も見学でき、歴史と文化に触れる貴重な体験ができます。

向かいの「みなとがわ屋」では、会津の郷土玩具「起き上がり小法師」の絵付け体験も楽しめます。旅の記念に自分だけの一点を作れるので、ファミリーやカップルにもおすすめです。

大内宿名物「高遠そば」を味わう

大内宿を訪れたら、名物の「高遠そば」はぜひ味わいたい逸品です。特に発祥の店として知られる「三澤屋」は土日や行楽シーズンには長蛇の列ができるほどの人気店。特徴はなんといっても、箸の代わりにまるごと一本の長ネギを使うこと。長ネギの辛みがそばの味を引き締め、爽やかな大根おろしとともに独特の風味を楽しめます。コシの強い地粉そばは、地元の井戸水で打たれた本格派です。

心温まるカフェと伝統工芸のお土産

散策で疲れたら「茶房やまだ屋」の古民家カフェで一休みを。築400年の民宿を改装した趣ある空間で、地元食材を使ったスコーンや甘酒、出汁巻き卵サンドなどが楽しめます。店内の雑貨コーナーには、会津本郷焼や会津木綿のストール、ちりめん細工など福島の伝統を感じるお土産が豊富に並びます。

見晴らし台と個性豊かな土産店が点在

街道の終点にある「大内宿見晴台」からは茅葺屋根の集落全体を見渡せ、その眺望はまさに絵画のようです。見晴台近くには「本家 叶屋」という店があり、色鮮やかなちりめん小物を販売。魔除けや疫病退散を願う伝統的な赤べこや、かわいらしい飾りお手玉はお土産にぴったりです。

また「若松屋」では、アイスクリームと粒あんをモナカで挟んだ名物「アイスもなか」を堪能できます。サクサクの皮と甘さ控えめのアイス、濃厚な粒あんの三重奏が人気で、冬季は白玉入りおしるこも提供されています。

地酒の試飲も楽しめる「大内宿三澤屋久右衛門」

大内宿唯一の酒屋「三澤屋久右衛門」では、地元会津の地酒を中心に約30種の日本酒や焼酎が並びます。店限定の純米酒「雪中百姫」は地下水を使い雪の中で寝かせる独自の製法で作られ、爽やかな香りとまろやかな味わいが魅力。試飲も可能なので、自分好みの一本を見つける楽しみもあります。

江戸情緒あふれる民宿での宿泊体験

大内宿には歴史を感じる民宿が2軒あり、宿泊すれば朝夕の静かな散策も満喫可能です。築300年以上の蔵座敷を持つ「本家扇屋」では、女将の温かいもてなしが人気。和室の客室にはこたつも備わり、田舎の実家のようにくつろげます。

「民宿伊勢屋」は重要文化財の本座敷を持ち、郷土料理も味わえる貴重な宿。名物の釜飯や山の幸を使った料理は訪れる人の心と体を満たします。

アクセスと周辺情報

大内宿へのアクセスは、東京から約4時間。東北新幹線で郡山駅へ、磐越西線に乗り換えて会津若松駅へ。さらに会津鉄道で湯野上温泉駅まで行き、そこから車か周遊バスで20分ほどです。周辺には温泉地や自然豊かなスポットも多く、日帰りでも宿泊でも満喫できます。


大内宿は江戸時代の暮らしが息づく貴重な歴史空間。茅葺き屋根の街並みや絶景スポット、地元グルメや伝統工芸、冬の雪祭りなど四季折々の楽しみも豊富です。日本の原風景に触れたい方にとって、心癒される旅の目的地となることでしょう。