愛媛県松山市の「道後温泉本館」は、日本三古湯のひとつに数えられる道後温泉のシンボルとして知られ、約3000年の歴史を誇る日本最古の温泉です。夏目漱石の小説『坊っちゃん』にも登場し、その名は全国に広まりました。重厚な木造建築の外観と、風情あふれる湯屋のたたずまいは、まさに“湯の都・松山”の顔といえる存在です。
公衆浴場で初の重要文化財指定
道後温泉本館は1994年、全国の公衆浴場として初めて国の重要文化財に指定されました。そして2019年から始まった大規模な保存修理工事が2024年12月に完了し、歴史的建造物としての美しさと機能性の両立を図りながら、再び全館営業を再開しています。現代のニーズにも応えるかたちで施設も整備されつつ、変わらぬ伝統を守り続けている点が、多くの人々を魅了しています。
多彩な入浴コースと体験
道後温泉本館では、用途や時間に合わせてさまざまな入浴コースが用意されています。最もシンプルな「神の湯 階下」では、700円で温泉入浴のみが可能。一方で「霊の湯 三階個室」や「霊の湯 三階貸切室」などのコースでは、浴衣やお茶・お菓子のサービスがあり、ゆったりとした時間を楽しむことができます。特に、最上階にある「飛翔の間」からの眺望や、格式高い和室での休憩は、非日常を味わえる貴重な体験です。
また、新たに導入された貸切室(要予約)は、これまで公開されていなかった部屋を活用した特別な空間。カップルや家族連れに人気のプランとなっています。
本館の見どころ——「又新殿」と「振鷺閣」
道後温泉本館には、皇室専用浴室として明治時代に造られた「又新殿(ゆうしんでん)」もあり、観覧ツアー(ガイド付き)で内部を見学することが可能です。この貴重な空間は、当時の建築技術と美意識を今に伝えるものとして評価されています。
屋根の上に建つ振鷺閣(しんろかく)も見逃せません。ここには道後温泉の守り神・白鷺伝説に由来する白鷺の像が設置され、毎朝夕に太鼓の音が鳴り響く「刻太鼓」が観光客に人気です。
湯上がりの楽しみとグッズ
本館の売店では、みかん石鹸やオリジナルタオル、坊っちゃん団子などのお土産も充実。風呂上がりには道後サイダーや牛乳を味わえるなど、昔ながらの“湯上がり文化”も健在です。
また、入浴券のデザインにもこだわりがあり、立体的に組み立てられる仕様のものも登場。旅の思い出として持ち帰れるユニークな記念品です。
アクセスと周辺情報
道後温泉本館へのアクセスは、伊予鉄道市内電車「道後温泉駅」から徒歩5分ほど。JR松山駅や松山市駅からは電車・タクシーで約20〜25分と便利です。近隣にはレトロな商店街「道後ハイカラ通り」や、地ビールを楽しめる飲食店もあり、散策や食べ歩きも楽しめます。
駐車場は近隣に整備されており、道後温泉駐車場は30分100円。観光客にとっても利用しやすい環境が整っています。
まとめ
「道後温泉本館」は、温泉文化を今に伝える歴史的建築であると同時に、地域に愛される現役の公衆浴場でもあります。四国を訪れるなら、ぜひ一度は足を運びたい場所。時代を超えても変わらない湯のぬくもりと、道後ならではのおもてなしを体感してみてはいかがでしょうか。
【住所】愛媛県松山市道後湯之町5-6
【営業時間】6:00~23:00(コースにより異なる)
【入浴料】大人700円~、小人350円~
【電話番号】089-921-5141
【公式サイト】https://dogo.jp/