江戸時代の大名庭園、加賀前田家の威光を今に伝える

石川県金沢市の中心部に広がる「兼六園」は、加賀藩歴代藩主・前田家によって築かれた日本屈指の大名庭園です。水戸の偕楽園、岡山の後楽園と並んで「日本三名園」の一つに数えられ、国の特別名勝にも指定されています。広さは約11.4万㎡。江戸時代から続く伝統と自然の美を融合させた回遊式庭園で、国内外から年間を通じて多くの観光客が訪れます。

兼六園の名は、中国・宋代の書物『洛陽名園記』に登場する「六勝(宏大・幽邃・人力・蒼古・水泉・眺望)」に由来。本来両立しえないとされた六つの景観美を見事に兼ね備えていることから、この名が付けられました。

廻遊式の造園美と四季の彩り

兼六園は、池や築山、茶屋、御亭を配置し、それらをめぐって散策する「池泉回遊式庭園」です。霞ヶ池や瓢池を中心に、石橋や曲水、小道が絶妙に設けられ、春の桜、初夏のカキツバタ、秋の紅葉、冬の雪吊りと、四季折々の美が訪れる人々を魅了します。

冬の風物詩「雪吊り」は、重たい雪から枝を守るために施される伝統技法で、特に唐崎松の雪吊りはライトアップとともに幻想的な風景をつくり出します。また、日本最古とも言われる自然水圧の噴水も見どころのひとつです。

名所を巡るおすすめスポット

  • 徽軫灯籠(ことじとうろう):兼六園の象徴的存在。琴の糸を支える琴柱に似た形で、霞ヶ池の畔に立ちます。

  • 唐崎松:13代藩主が琵琶湖畔の唐崎から種を取り寄せて育てた黒松。枝ぶりと雪吊りが見事。

  • 根上松(ねあがりまつ):空中に根が浮かぶように見える奇観。13代藩主が工夫して作り上げた名木。

  • 雁行橋(がんこうばし):雁が列をなして飛ぶ様を模した橋で、長寿のご利益があると伝わります(現在は通行不可)。

  • 花見橋と曲水:5月のカキツバタ、秋の紅葉、冬の雪景色など、四季ごとの花が彩る人気の撮影スポット。

  • 梅林:約20品種・200本の梅が咲き誇る。3月中旬が見頃です。

  • 時雨亭:茶の湯文化を伝える再建された御亭。園内を眺めながら抹茶と和菓子を味わうことができます。

昼も夜も楽しめる庭園の表情

兼六園では、春の桜、初夏の新緑、秋の紅葉、冬の雪景色など季節に応じたライトアップイベント「金沢城・兼六園四季物語」が開催され、夜間無料開放されます。光に照らされた徽軫灯籠や唐崎松の雪吊りは、日中とは異なる趣を放ち、多くの観光客が幻想的な景観に見入ります。

また、3月の観桜期、年末年始、お盆、文化の日などには無料開園も実施。特に「さくら名所100選」にも選ばれた春の桜シーズンは、ソメイヨシノや兼六園菊桜、熊谷桜などが庭園全体を華やかに染め上げます。

アクセス・基本情報

  • 住所:〒920-0936 石川県金沢市兼六町1

  • 営業時間
     3月1日~10月15日 7:00~18:00(最終入園17:30)
     10月16日~2月末日 8:00~17:00(最終入園16:30)

  • 早朝無料開園:季節により4:00~6:00台から開始

  • 料金:大人320円、小人(6〜17歳)100円、65歳以上および障がい者は無料(証明書提示)

  • 駐車場:あり(兼六駐車場480台ほか周辺に複数)

  • アクセス
     ・JR金沢駅からバスで約15分、「兼六園下・金沢城」バス停から徒歩約3分
     ・北陸自動車道「金沢東IC」から約20分、「金沢西IC」から約25分

  • 問合せ:石川県金沢城・兼六園管理事務所 TEL:076-234-3800

  • 公式サイトhttps://www.pref.ishikawa.jp/siro-niwa/japanese/access.html


兼六園は、初めての方にも、何度訪れても新しい感動を与えてくれる庭園です。歴史と自然が静かに語りかけるこの場所で、ぜひ四季折々の表情を楽しんでください。金沢城や茶屋街とあわせて巡れば、金沢の文化と美の深さに触れる旅になることでしょう。