「一生に一度はお伊勢参り」と言われるように、伊勢神宮は古来より日本人の信仰の中心として親しまれてきた特別な場所です。正式名称は「神宮」。天照大御神(あまてらすおおみかみ)を祀る内宮(皇大神宮)と、豊受大御神(とようけのおおみかみ)を祀る外宮(豊受大神宮)をはじめ、三重県伊勢市を中心に125社から構成される壮大な神社です。


内宮と外宮の違いと参拝の作法

伊勢神宮では古くから「外宮先祭(げくうせんさい)」の習わしに従い、外宮から内宮の順に参拝するのが基本とされています。外宮は衣食住をつかさどる豊受大御神、内宮は皇室の祖神・天照大御神を祀る神社です。

参拝前には手水舎(てみずや)で手と口を清め、鳥居の前で一礼。正宮では「二拝二拍手一拝」の作法でお参りします。お願いごとではなく、日々の感謝の気持ちを伝えるのが伊勢神宮ならではの礼儀です。


神域に広がる、日本文化の粋

伊勢神宮の境内は「神域」と呼ばれ、神聖な空気に包まれています。参道には樹齢700年を超える杉の大樹が並び、悠久の時の流れを感じられます。社殿は日本古来の「神明造(しんめいづくり)」という建築様式で建てられ、20年に一度の式年遷宮(しきねんせんぐう)で隣接地に同じ姿の社殿を新築・遷座することで、常に清新さを保っています。

内宮にある宇治橋(うじばし)は木造の美しい大橋で、日本建築の粋が集約されています。外宮と内宮の社殿を見比べると、屋根の鰹木(かつおぎ)や千木(ちぎ)の形状の違いなど、細部にも意味と美意識が込められていることがわかります。


朝参りのすすめ

伊勢神宮は毎朝5時に開門します。早朝の澄んだ空気の中で行う「朝参り」は、心身が洗われるような清らかな体験。外宮と内宮では月に3度、神馬(しんめ)が神前に牽参(けんさん)される神事があり、特別な光景に立ち会えることも。

また、外宮の御饌殿(みけでん)では365日休むことなく、朝夕に神様に食事が供えられる「日別朝夕大御饌祭(ひごとあさゆうおおみけさい)」が行われており、朝には忌火屋殿(いみびやでん)から立ちのぼる炊煙を見ることができます。


参拝後は「おはらい町」「おかげ横丁」へ

参拝を終えたら、内宮前に広がる門前町「おはらい町」と「おかげ横丁」へ。江戸から明治期の町並みを再現したこのエリアでは、赤福や伊勢うどん、てこね寿司など、伊勢志摩ならではのグルメを堪能できます。1日や月初には赤福の「朔日餅(ついたちもち)」も人気で、早朝から行列ができるほどです。


アクセス・基本情報

住所
・内宮:三重県伊勢市宇治館町1
・外宮:三重県伊勢市豊川町279

開門時間
・1月〜4月・9月:5:00〜18:00
・5月〜8月:5:00〜19:00
・10月〜12月:5:00〜17:00

料金:無料
駐車場:内宮(有料)/外宮(無料)
電話:0596-24-1111(神宮司庁 代表)
公式サイトhttps://www.isejingu.or.jp/

交通アクセス
・内宮:近鉄「五十鈴川駅」から徒歩約30分
・外宮:JR・近鉄「伊勢市駅」から徒歩約5分
・外宮:近鉄「宇治山田駅」から徒歩約10分


旅の拠点に、伊勢志摩観光もセットで

伊勢神宮を訪れるなら、ぜひ周辺の観光もあわせて楽しんでください。鳥羽では新鮮な海の幸や水族館、志摩ではリゾート施設や英虞湾(あごわん)の絶景が堪能できます。観光列車「しまかぜ」での移動も人気です。


伊勢神宮――一度は訪れたい、日本人の原点

約2000年の歴史を持ち、今も変わらず日本人の信仰を集める伊勢神宮。日常を離れて心静かに向き合える場所として、訪れる人の心に深く残る体験を提供してくれます。「せめて一生に一度でも」と願う旅は、きっとあなたの人生を豊かにしてくれるでしょう。