大正から昭和初期にかけて多彩な活動を展開した美術家・小村雪岱(こむら せったい)の作品を紹介する展覧会「密やかな美 小村雪岱のすべて」が、大阪・あべのハルカス美術館で開催される。会期は2025年12月27日(土)から2026年3月1日(日)まで。雪岱の代表作や交流の軌跡をたどり、その全貌に光を当てる貴重な機会となる。
小村雪岱は、1874年に生まれ、昭和初期にかけて活躍した美術家。日本画だけでなく、泉鏡花の書籍装幀や挿絵、映画美術の考証、舞台装置のデザインなど幅広い分野で才能を発揮した。その繊細で優美な作風は、江戸中期の浮世絵師・鈴木春信に重ねられ、「昭和の春信」とも称された。
彼の画業の中でも特に知られるのが、美人画をはじめとする端正で気品ある作品群。《青柳》や《おせん》など、物語性と情趣にあふれる代表作は今なお高い評価を受けている。雪岱の作品は単なる絵画にとどまらず、舞台や書籍の世界観をも彩り、日本の近代美術と大衆文化の橋渡し役を担ったといえるだろう。

また、雪岱は泉鏡花をはじめ、松岡映丘など同時代の文学者・画家・出版人・舞台関係者との交流を通じて、その表現をさらに深めていった。展覧会「密やかな美 小村雪岱のすべて」では、こうした人的ネットワークにも注目。彼の創作がどのように時代の文化と結びつき、発展していったのかを多角的に紹介する。
会場には、代表的な日本画や装幀デザイン、舞台装置関連の資料が一堂に集結し、雪岱の全活動を俯瞰できる構成となる。文学と美術、そして生活文化の接点に立った雪岱の存在を再評価する展覧会は、近代日本美術史を知るうえでも欠かせない内容といえるだろう。

展覧会概要
展覧会「密やかな美 小村雪岱のすべて」
会期:2025年12月27日(土)~2026年3月1日(日) 会期中に展示替えあり
会場:あべのハルカス美術館
住所:大阪府大阪市阿倍野区阿倍野筋1-1-43 あべのハルカス 16F
開館時間:火~金曜日 10:00~20:00 / 月・土・日曜日、祝日 10:00~18:00
※入館はいずれも閉館30分前まで
観覧料:一般 1,800円(1,600円)、高校・大学生 1,400円(1,200円)、小・中学生 500円(300円)
※( )内は、前売および15名以上の団体料金
※前売券は9月27日(土)から12月26日(金)まで販売
※障がい者手帳の所持者は、美術館チケットカウンターでの購入者本人および付添者1名まで、当日料金の半額
※チケットは、9月27日(土)10:00より、あべのハルカス美術館ミュージアムショップ(美術館開館日のみ)、あべのハルカス美術館ホームページ(オンラインチケット)ほかにて販売
【問い合わせ先】
あべのハルカス美術館
TEL:06-4399-9050