岐阜県恵那市にある岩村(いわむら)町は、NHK朝ドラ「半分、青い。」のロケ地としても知られる町です。日本昔話を思わせる田園風景、日本三大山城の一つである岩村城址、観光地化されすぎず落ち着いた城下町の佇まい、そして穏やかで親しみやすい地元の人々──そんな魅力を持つ町です。
この岩村町は、岐阜県の「NEXT GIFU HERITAGE(ネクスト ギフ ヘリテージ)~岐阜未来遺産~」において、「岩村の山城・城下町と農村景観めぐり」に認定されるほど、地域資源の価値が高く評価されています。
「農村景観日本一」と称される富田地区
岩村町富田地区は、京都教育大学の木村教授により「農村景観日本一」と名付けられました。人工物がほとんどなく、棚田が連なる盆地の風景はまさに日本昔話の世界です。1998年には「美しい日本のむら景観写真コンテスト」集落部門で農林水産大臣賞を受賞しています。展望台からの眺めは、四季折々の風景が楽しめ、映画やドラマのロケ地としても活用されてきました。
富田地区には、まっすぐに伸びる田園の一本道もあり、歩くだけで懐かしい農村の空気に包まれます。
江戸時代の風情を残す城下町
岩村町本通りは、江戸~昭和初期の建造物が残る商家群として1998年に「重要伝統的建築物群保存地区」に選定されました。テーマパークのような観光地ではなく、地元の人々の生活が息づく町並みです。旧家や商家、なまこ壁が並び、歩くと当時の面影が感じられます。歴史ある道標も点在し、「右はみたけ道、左はなごや道」といった刻印が残っていました。
日本三大山城・岩村城
岩村城は、奈良県の高取城、岡山県の備中松山城と並ぶ日本三大山城の一つで、日本百名城にも選ばれています。標高717mの山上に位置し、1185年に加藤景兼によって築城され、800年以上の歴史を誇ります。「女城主の里」とも呼ばれ、織田信長の叔母・おつやの方が治めたこともあります。
天守閣は残っていませんが、六段に重なる石垣や本丸跡からの眺望は壮観で、霧が立ち込めることも多く「霧ヶ城」とも呼ばれます。
岩村の郷土グルメ
岩村は食も魅力的です。
五平餅:炊きたて米を半つぶしにして串に刺し、醤油や味噌のたれで焼き上げます。くるみやピーナッツが入ったタレで香ばしさと甘みのバランスが絶妙です。富田地区では五平餅作り体験も可能です。
カステラ:松浦軒本店は1796年創業。銅板造りで炭火焼きする昔ながらの製法を守り、卵の風味豊かなしっとりカステラを提供しています。かめや菓子舗ではトーストして食べる「朝かすてーら」も人気です。
えなハヤシ:地元米と寒天、三浦豚を使ったご当地ハヤシライス。濃厚ソースと古代米が絡む一品です。
日本酒「女城主」:岩村酒造の銘柄で、特別純米やしぼりたて生原酒など多彩な味わいを試飲できます。
かんから餅:明治から続く甘味処の名物。あんこ、きなこ、ごまの3種類があり、もっちりした食感が魅力です。
宿泊は岩村山荘
岩村城址の麓、旧藩主邸の高台に建つ「岩村山荘」は、囲炉裏で飛騨牛や岩村ブランド三浦豚、川魚を炭火焼きで楽しめる宿。朝食には湯豆腐やだし巻きもつき、寒暖差の大きい高地でも快適に過ごせます。
アクセス
名古屋駅からJR中央本線で恵那駅まで約60~70分。恵那駅から明知鉄道に乗り換え、30分で岩村駅に到着します。明知鉄道では「じねんじょ列車」などのイベント列車も運行しており、車窓の風景を楽しみながら地元の味を味わえます。
まとめ
岩村町は、日本の農村の原風景、歴史ある城下町、そして美味しい郷土料理が楽しめる、静かで落ち着いた町です。観光地化されすぎず、ゆったりと町歩きを楽しみたい人に最適。穏やかで親しみやすい岐阜の人々に支えられ、未来に受け継がれてほしい町でもあります。