東京・上野の国立西洋美術館では、リトアニアを代表する芸術家ミカロユス・コンスタンティナス・チュルリョーニスの大規模展覧会「チュルリョーニス展 内なる星図」を開催する。会期は2026年3月28日(土)から6月14日(日)まで。日本での本格的な回顧展は実に34年ぶりとなる。
1875年生まれのチュルリョーニスは、絵画と音楽という二つの分野で才能を発揮した稀有な存在だ。わずか35歳で世を去るまでの短い画業は約6年間ながら、300点を超える作品を残し、その多くが象徴主義やアール・ヌーヴォーの潮流に呼応しつつも独自の世界を築いている。彼の革新性は、音楽の形式を絵画に応用し、空間芸術に時間の流れを取り込もうとした点にある。
本展では、日本初公開作品を含む約80点を紹介。代表作であり唯一1mを超える大作《レックス(王)》や、精神性に満ちた《祭壇》などが来日する。また、《二部作「プレリュード、フーガ」よりフーガ》は、音楽の「模倣」「展開」「転回」といった要素を視覚的に構築した一例で、モミの木の風景をフーガの形式で描き出している。さらに「第5ソナタ(海のソナタ)」「第6ソナタ(星のソナタ)」といったソナタ連作も展示され、音楽のリズムと構造を取り込んだ独自の表現を体感できる。

チュルリョーニスにとってリトアニアの自然は創作の根源だった。彼は風景を写実的に描くのではなく、生命の律動や象徴性を抽象的に捉えた。《春》や連作「冬」など、日本初公開となる自然を主題とした作品群からは、四季の循環や生命の移ろいに対する鋭い関心が伝わってくる。
また、彼の創作は民族解放運動とも深く関わっていた。当時ロシア帝国の支配下にあったリトアニアで、民話や民謡、民芸といった民衆文化を芸術に取り入れることは、国民的アイデンティティを回復する手段でもあった。同時に、神智学や天文学といった国際的思想にも傾倒し、宇宙や人間精神への探究を作品に反映させている。
「内なる星図」というタイトルの通り、本展は絵画と音楽の融合を試みたチュルリョーニスの世界を、精神的・宇宙的な広がりの中で再発見する機会となるだろう。

展覧会概要
企画展「チュルリョーニス展 内なる星図」
会期:2026年3月28日(土)〜6月14日(日)
会場:国立西洋美術館 企画展示室 B2F
住所:東京都台東区上野公園7-7
開館時間:9:30〜17:30 (金・土曜日は20:00まで、入館は閉館30分前まで)
休館日:月曜日 (3月30日、5月4日は開館)、5月7日(木)
観覧料:一般 2,200円、大学生 1,300円、高校生 1,000円
※中学生以下、心身障害者および付添者1名は無料(証明書の提示が必要)
※当日の観覧券で同時開催の「北斎 冨嶽三十六景 井内コレクションより」および常設展も観覧可能
【問い合わせ先】
ハローダイヤル
TEL:050-5541-8600