東京都写真美術館では、総合開館30周年を記念した展覧会「遠い窓へ 日本の新進作家 vol.22」を開催する。会期は2025年9月30日(火)から2026年1月7日(水)まで。本展は、若手アーティストを紹介するシリーズ「日本の新進作家展」の第22回にあたる。写真と映像を軸に、社会や記憶、場所といったテーマから立ち上がる“小さな物語”を掘り下げる企画だ。
出品するのは、寺田健人、スクリプカリウ落合安奈、甫木元空、岡ともみ、呉夏枝の5名。それぞれが写真や映像を基盤にしながらも、インスタレーション、立体、音、テキストといった多様な表現方法を用いて、自身のテーマを探求している。
たとえば、1991年沖縄生まれの寺田健人は「性」や「生まれ」といった社会的枠組みと人間の行動の関係性を問い直してきたアーティスト。本展では《想像上の妻と娘にケーキを買って帰る》や《trace his scent》といった作品を通じて、規範やジェンダーの意味を再考させるインスタレーションを披露する。
また、1976年大阪生まれの呉夏枝は在日韓国人三世としての自身のルーツを背景に、語られなかった個人の記憶や歴史に光をあててきた。織る、染める、ほどくといった技法を取り入れつつ、写真や音声、文章を組み合わせたインスタレーションを展開。本展では、オーストラリア移民の歴史と個人の記憶をテーマにしたシリーズから派生した新作《Seabird Habitatscape#2-Banaba, Nauru, Viti Levu》を日本で初公開する。

さらに、日本とルーマニアという二つの母国をもつスクリプカリウ落合安奈は、土地と人との関係を丁寧に描き出す作品を発表してきた。甫木元空は映画や音楽、小説など幅広い表現活動を行い、本展でもジャンルを横断する手法で“小さな物語”を紡ぐ。岡ともみは「光と影」「時間と記憶」「反転」をキーワードに、小さなモニュメントのような作品を生み出し続けており、本展でもその世界観を披露する。
「遠い窓へ」というタイトルは、作品を通して鑑賞者が自身の内面や社会との関係を新たに見つめる“窓”を開くことを意味している。各作家のアプローチは異なりながらも、それぞれの作品は、個人と社会、記憶と未来をつなぐきっかけを提供してくれるだろう。
展覧会概要
展覧会名:総合開館30周年記念 遠い窓へ 日本の新進作家 vol.22
会期:2025年9月30日(火)〜2026年1月7日(水)
会場:東京都写真美術館 3階展示室
住所:東京都目黒区三田1-13-3 恵比寿ガーデンプレイス内
開館時間:10:00〜18:00(木・金曜日は20:00まで) ※入館は閉館30分前まで
休館日:月曜日(祝日の場合は開館し翌平日休館)、12月29日(月)〜1月1日(木・祝)
観覧料:一般 700円、学生 560円、高校生・65歳以上 350円
※中学生以下、障害者手帳の所持者および介護者(2名まで)は無料
※オンラインで日時指定チケット購入可
■出品作家
寺田健人、スクリプカリウ落合安奈、甫木元空、岡ともみ、呉夏枝
【問い合わせ先】
東京都写真美術館
TEL:03-3280-0099