広島市現代美術館では、特別展「鷹野隆大 カスババ —この日常を生きのびるために—」が2025年9月27日(土)から12月7日(日)まで開催される。本展は東京都写真美術館で話題を呼んだ展覧会の巡回展で、鷹野の代表作から未公開作品まで約120点が一堂に会する。

鷹野隆大は、写真集『IN MY ROOM』をはじめ、セクシュアリティや性差に光を当てる作品で知られる写真家。その表現は、美しいものや理想化された姿に留まらず、弱さや醜さをも「現実」として捉え、社会や日常の中に潜む多様性を浮き彫りにしてきた。東日本大震災以降は「影」を被写体とするシリーズを制作するなど、写真というメディアの根源にも挑み続けている。

本展では、鷹野が長年にわたり取り組んできた複数のシリーズを網羅的に紹介。「In My Room」では、セクシュアリティの境界やその曖昧さを探り、他者と自己の関係を視覚化した作品群を展示。「毎日写真」では、自らに課した“毎日最低1枚撮る”という実践を通じて、日常の断片を積み重ねることの意味を問いかける。また「カスババ2」では、都市の荒れた風景やみすぼらしい日常を切り取り、社会の裏側を直視する視線を提示。さらに「日々の影」では、自身の影を定点的に記録し続け、存在の痕跡と時間の流れを浮かび上がらせる。

会場構成は建築家・西澤徹夫が手掛け、写真だけでなく映像やインスタレーションを含む多彩な展示形式で構成。来場者は作品を通じて、鷹野の活動の軌跡をたどりながら「生きのびるための表現」とは何かを体感できる内容となっている。

“ありのままの現実”を映し出す鷹野の視線は、単なるドキュメンタリーではなく、社会の中で生きる個人の姿を深く問い直すもの。広島という土地で開かれる今回の展示は、戦争や震災といった歴史を背負う都市の文脈とも重なり、来場者に強いメッセージを投げかけるだろう。


展覧会概要

特別展「鷹野隆大 カスババ —この日常を生きのびるために—」
会期:2025年9月27日(土)〜12月7日(日)
会場:広島市現代美術館 展示室 B-2・B-3
住所:広島県広島市南区比治山公園1-1
開館時間:10:00〜17:00(入場は閉館30分前まで)
休館日:月曜日(10月13日(月・祝)、11月3日(月・祝)・24日(月・振)は開館)、10月14日(火)、11月4日(火)・25日(火)
観覧料:一般 1,100円(850円)、大学生 800円(600円)、高校生・65歳以上 550円(400円)、中学生以下 無料
※( )内は前売および30名以上の団体料金
※前売券は、9月26日(金)まで、広島市現代美術館受付、オンラインショップ「339」、チケットぴあ(Pコード 995-608)にて販売

【問い合わせ先】
広島市現代美術館
TEL:082-264-1121